⑳中国美術史における「文人画」概念の由来と展開「文人画」概念の美術史における主流的な地位が揺らがなかったのか。研究者:東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程目的本研究の目的は、近代以来の中国美術史学と「中国絵画史」が、日本の影響を受けながら、独自に展開していった経緯を、その基幹的な概念だった「文人画」の由来とそれによる再構築の過程を中心に考察することで、具体的に明らかにすることである。意義・価値近年、近代に成立した中国美術史学史に関する研究は、日中両国の研究者らの注目を集め、多数の研究成果が蓄積されている。近代における中国美術史学の形成は、近代日本の中国美術史研究から大きな影響を受けたが、しかしそれに対する論考は、まだ十分に行なわれていない。筆者はすでに「中国美術史」の核心と言える「文人画」概念が、中国既存の概念ではなく、1920年代頃に日本から流入した外来の概念であることを、『近代画説』25号(明治美術学会、2016年)に発表した。これはいわばその起点を明らかにしたものだが、本研究計画はその後の経緯、つまり「文人画」概念がなぜ、どのように中華民国に受容されたのかを明らかにすることで、中国美術史学の形成と展開、「中国絵画史」の形成の特性に加え、美術史領域から中国近代思想史の研究にも裨益すると考えられる。同時に、中国美術史と連動する東アジア美術史(日本美術史、韓国美術史など)にも重要な意義を持つと考えられる。構想「文人画」という概念の中国での展開過程は、時期的に次の三期に分けて検討すべきだと考えている。1、1920年代に「文人画」概念がなぜ、どのように中華民国の美術史研究者らに受容されたか。2、1930~40年代の日中戦争期、「文人画」概念はどのような機能を果たしたのか。3、1960~70年代に儒教伝統や知識分子などを批判した文化大革命とその後も、なぜ本研究は、1を次の三点から考察する。―56―李趙雪
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