17世紀後半ヴェネツィアにおけるルカ・ジョルダーノ作品の史料研究―ナポリ・ヴェネツィア間の絵画取引の観点から―心に他分野研究者との共同研究の場を持ってきた。本研究の成果をもとに、他分野研究者との共同研究を一段と深化できるものと期待される。本研究は、中~近世南九州史の総合的な研究にも資するところ大になると見込まれる。3,前項で記したように本研究の成果は、将来的には北部九州との対比や北の境界地域である東北地域との比較研究、ひいては「日本」美術史についての多角的な研究にも貴重な材料となりうるものと考える。長期的な視野のもとに本研究を進行させたい。研究者:京都外国語大学非常勤講師本研究の目的は、ジョルダーノが、ヴェネツィアの聖堂や蒐集家のために制作した作品の注文状況を、作品代金の記録を手がかりに解明することである。検討の対象となるのは、現在のヴェネツィアにあるジョルダーノ作品にくわえ、史料によって跡づけられる17世紀当時のヴェネツィアにあった作品である。本研究の意義は以下の2点である。①「ジョルダーノの評価史にかかわる新知見の提供」しかし、同時代の批評家ボスキーニ(1674)が、ティツィアーノやヴェロネーゼに連なる16世紀ヴェネツィア絵画の系譜にジョルダーノを位置づけたように、ヴェネツィアにおけるジョルダーノのイメージは、かならずしもリベラ風の作品群に結びつけられたわけではない。本研究は、こうした評価史にかかわる議論に新知見を提供することができるだろう。なお、このテーマは、拙稿(注)とともに、筆者が現在用意している博士論文に組み込まれる予定である。17世紀ヴェネツィアは、ジョルダーノにきわめて好意的な環境であった。1660年代前半からすでにジョルダーノ作品はヴェネツィアにもたらされていたが、その名声が確固たるものとなるのは、1660年代後半から1670年代にかけてである。De Vito/Scavizzi(2012)は、1650年代から1660年代ヴェネツィアにおいてテネブリズム絵画が流行したことに鑑み、ヴェネツィアでのジョルダーノの成功を、リベラ風の哲学者の肖像や聖人像の流通に帰している。―82―小松浩之
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