《日本・東洋美術部門》実践女子大学非常勤講師の塚田美香子が財団賞の受賞者にそれぞれ選ばれました。また、優秀者には各部門から、名古屋大学大学院人文学研究科 特任助教の百合草真理子及び九州大学大学院人文科学府博士後期課程単位取得満期退学の白木菜保子氏が選ばれました。財団賞の選考理由については、大髙委員と私が各部門の選考理由を執筆しましたので、ここで読み上げます。財団賞:高志優秀者:白木菜保子逸見(狩野)一信筆五百羅漢図における梵土表象の調査研究南宋から元朝にかかる宋末元初の時代は、仏教絵画においてもすぐれた高みに達した創造的時代であった。それは画院系画家や禅宗系画僧によって新しく創られた水墨道釈人物画群と、専門職業画家やその工房によって描かれた、唐代以来の伝統を誇る彩色道釈人物画群に大別される。中国において、後者は当時の文人たちに絵画芸術として評価されること少なく、一般にも日常的な宗教用具としての地位に止まったように思われる。これに対して我が国では、寧波渡りの唐物として、高い尊敬を集めてきた。生れ故郷とは比較にならない宝物だったのである。かの『君台観左右帳記』に、下品とはいえ、陸信忠の名が記録されるのは、何よりの証拠であろう。このような日中比較美術史の見地からも、陸信忠に象徴される宋末元初色彩道釈人物画の研究は、我々の手によって遂行されなければならない。もちろん古くから行われてきたし、近年徐々に進められているが、水墨道釈人物画に比べれば、その研究蓄積はけっして厚いものではない。高志緑氏の「陸信忠筆『仏涅槃図』の研究」は、このような研究状況を一気に打破まず、対象となる1人1人について選考委員の意見交換を行い、2次、3次の絞り込みののち、6名が最終選考に残りました。そこで慎重に審議を重ねた結果、大阪大学大学院文学研究科助教(現・大阪大学大学院文学研究科 招へい研究員)の高志緑氏、西洋美術部門から成城大学大学院文学研究科博士課程後期、緑陸信忠筆「仏涅槃図」に関する研究―16―
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