③日本における13~16世紀のガラスに関する調査研究研究者:東海大学非常勤講師林目的本研究の目的は、13~16世紀の日本におけるガラス製品の生産技術ならびに需要について総合的に検討し、当期日本のガラスに対する従来の評価の見直しを図ることである。とくに本研究では、日本国内の通史的展開という「タテ」のつながりだけではなく、並行期の中国・韓半島との「ヨコ」のつながりにも注目しながら、東アジアという包括的視野のなかで日本出土・伝世資料に認められる特徴を明らかにする。意義・価値本研究の意義は、第一に、日本における13~16世紀のガラス製品に着目するはじめての総合的な研究という点にある。日本ガラス工芸史のなかで当期は不明な点がもっとも多い時期といっても過言ではなく、総合的な研究を欠いてきた。本研究はこうした現状を打開する試みであり、日本ガラス工芸史の通史的展開の理解に貢献するものである。第二に、並行期の中国・韓半島との「ヨコ」のつながりにも目を向ける視野の広さにある。日本出土・伝世資料には「東アジアのいずれの地域で生産されたのか」という課題が常にあり、中国や韓半島の資料との比較検討は不可欠である。しかし実際のところ、当期の中国や韓半島の作例に対する先行研究も概説的な言及にとどまっている現状がある。この点において本研究は、東アジアのガラス工芸史というより大きな枠組みの見直しにも発展し得る基礎研究として位置づけられる。構想(A)現存資料・文献史料の集成(課題1「全体像の把握」)中国・韓半島出土作例について発掘調査報告書をもとに集成し、出土地の分布、製品の種類・数量などの基礎情報を整理する。また、公開データベースも活用しながら文献史料にみられるガラス関連記事を集成し、ガラス製品の使途に関する基礎情報をまとめる。(B )実見調査による造形・技法上の特徴の把握(課題2:製作地の判別、課題3:前後との関連性)東アジアでつくられたガラス製品はほぼ同時期に同一材質のガラスが流通するとい―30―佳美
元のページ ../index.html#45