④中国における花器の伝統と系譜う特徴があるため、製作地判別にあたっては造形・技法上の特徴にもとづく比較検討が欠かせない。これは日本国内の技術的な連続性を考察するためにも必要である。本研究では、日本出土・伝世資料を中心に、おおよその年代の判明する資料、希少性の高い容器類、生産関連遺跡からの出土品を優先して実見調査を行う。調査にあたっては、マイクロスコープを用いた細部の詳細な観察を行い、個々の作例の造形・技法上の特徴に関する情報を蓄積する。(C)考察A・Bをふまえ、日本国内の「タテ」の流れと並行期の中国・韓半島との「ヨコ」のつながりに留意しながら、13~16世紀の日本におけるガラス製品の生産技術ならびに需要についてまとめ、当期日本のガラスに対する従来の評価の見直しを行う。なお、本研究のまとめにあたっては、今後の長期的な展望として13~16世紀の東アジアのガラス全体の見直しを進めていくうえでの具体的な検討課題も提示したいと考えている。研究者:学習院大学大学院人文科学研究科博士後期課程構想花器に関する研究は、中国において、実用性の角度から花器を考察するものが多い。歴史の研究において、黄永川氏が長年にわたり、中国の挿花文化史について研究し、『中国挿花史』などの著作を通して、歴代における挿花文化の時代的特徴と精神史とを丁寧に検討されている。ところが、いけばなを主な研究対象とする場合、当然ながら、花の方に焦点を当てることになる。花器についての論述は、極めて限られる。また、揚之水氏が、『宋代花瓶』を著し、宋代の花瓶類について論考を進められているが、宋時代のみ対象となるため、歴史的な比較が少なく、なお瓶形以外の花器は研究対象外となっていた。一方、日本においては、中田勇次郎氏は自身の翻訳した『文房清玩』の中で、中国における挿花文化の歴史を、時代順に詳らかに書かれている。細川護貞氏は、中国の挿花文化が如何に日本に伝わってきたのか、またその精神面の変遷について論じられている。この外、いけばな史の通史的研究として、工藤昌伸氏の研究によって唐様の―31―李含
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