俵屋宗達筆・烏丸光廣賛「牛図」に関する研究Triomphe des mairies : grands décors républicains à Paris, 1870-1914, cat.exp., Paris : Musée du Petit Palais, 1986）。そのため本研究の対象装飾画の多くは、初めて個別に取り上げられる作例となる。Université de Clermont II, 1980/ Jennifer L. Shaw, Dream States, Puvis de Chavannes, Modernism and the Fantasy of France, New Haven and London : Yale University Press, 2002）。これらの成果を踏まえ本研究は、国家の方針と必ずしも同一でないパリ市・セーヌ県による区庁舎装飾事業の実施状況と、個々の作品評価を調査することで、伝統的表現の応用による「人生の諸段階」主題と、当時の政治や社会の動向との結びつきを実証的に明らかにする。構想―73―奥井素子の作例は、人々の生活と美術を繋ぐ重要な結節点にあると筆者は考える。既に下絵の所蔵先プティ・パレにより、区庁舎装飾の基礎資料は公開されているが、行政注文の文脈が濃く、今も現地で区庁舎を飾る装飾画は、個人の芸術創造を評価した20世紀のモダニズムや、19世紀アカデミスム絵画を見直す動向からも抜け落ちてきた（Le 歴史画制作に優れたE.レヴィによる16区庁舎装飾画「人生の諸段階」連作（1884－87年）を、古代の描写と宗教画の構図に着目して論じるにあたって、次の先行研究から、この二つの表現と当時の社会背景との関連が示唆される。1880年代に多くの国家注文を得た P. ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの装飾画について、P. ヴェッスは、古代ガリアの表現とナショナリズムの関連を論じ、J. ショーは、古代情景と宗教的情感の表現が政治傾向により異なった支持を受けたことを指摘する（Pierre Vaisse, “Les Gaulois dans la peinture officielle, 1870-1914”, Nos ancêtres les Gaulois, Clermont-Ferrand : 第三共和制の区庁舎装飾の文脈から、「人生の諸段階」主題における「古代」の表現の社会的な意味を論じる本研究は、従来象徴主義芸術と結びつけられてきたこの主題の社会的文脈を論じる筆者の博士論文の一環をなし、この社会的観点から、美術史研究に新たな地平を切り拓くことに繋がると考える。研究者：京都市立芸術大学非常勤講師烏丸光廣が賛をしている、俵屋宗達が描いた「牛図」（重文、頂妙寺蔵）について、
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