以上にみられる異同は、観普賢菩薩行法と延命法に用いる図像が重複した結果であると推測できる。さらなる考察にあたって華厳三聖像を含めた検討を進めれば、経典を超えた重層的な影響関係を提示しうると考える。本研究でこれら図像の展開を明らかにするなかで、高麗製か元製かという議論があった「釈迦三尊像」(クリーヴランド美術館、静嘉堂文庫)について、図像のうえで元に淵源があると示すことができる。本研究は中国美術史のみならず、東アジア美術史にもまた重要な事例を提供しうるだろう。―121―
元のページ ../index.html#136