鹿島美術研究 年報第37号
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大髙選考委員《日本・東洋美術部門》財団賞:横尾拓真また、優秀者には各部門から、福岡市美術館学芸員の宮田太樹氏及び神戸大学大学院人文学研究科博士課程後期課程の亀田晃輔氏が選ばれました。財団賞の選考理由については、有賀委員と高階委員が各部門の選考理由を執筆しましたので、ここで読み上げます。谷文晁を中心とした関東南画(文人画)における中国絵画学習の研究―清代福建様式の影響を中心に―優秀者:宮田太樹北部九州における神仏習合造像をめぐる研究―平安時代前期を中心に―横尾拓真氏の研究は、関東南画(文人画)の領首あるいは巨匠と呼ばれた谷文晁(1763-1841)がどのような作品を学び、自身の作画に活かしたかを中心に考察したものである。文晁の多岐に亘る作品は、山水画に限っても多様な影響源が想定される。本研究では、文晁山水画の一類型とみられる「青緑山水図(蜀桟道図)1822東京富士美術館蔵」を取り上げ、その渕源を探索すると共に具体的な作品を比較することで、文晁山水画の特徴と歴史的な位置に触れ、最後に文晁を始めとした関東南画に及ぼした中国清代18世紀前半に活動が見られる福建地方画壇の影響を概観し、その影響力を提起する。まず、文晁の「青緑山水図」の渕源となった作品と画家として「青緑山水図」に近似する図様を持つ中国画として、後入れ落款であるが、当時、趙珣の画として受容されていた「蜀桟道図」(橋本コレクション)や、同じ図様を取る谷文晁「蜀桟道図」まず、対象となる1人1人について選考委員の意見交換を行い、2次、3次の絞り込みののち、6名が最終選考に残りました。そこで慎重に審議を重ねた結果、日本・東洋美術部門から名古屋市博物館学芸員の横尾拓真氏、西洋美術部門から九州大学大学院人文科学府博士後期課程、北九州市立大学非常勤講師の森結氏が財団賞の受賞者にそれぞれ選ばれました。―17―

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