は500点、また確認できた画家の総計も130名を超え、今後の調査次第ではさらにその数を増やすものと思われる。また、これらには円山応挙(1733-95)が興した円山派、呉春(1752-1811)に始まる四条派の他にも、岸・森・原・望月等の諸派、さらにそれに連なる近代の絵師まで含まれ、美術館の古い分類では、これらがまとめて「京都派(Kyoto School)」と称されている。このように、膨大かつ多岐に渡るそのコレクションを完全に理解するには、これより集中的な整理および研究が欠かせない。現在はいまだ雑多な状態であるこのコレクションの整理・分類を進めることは、それ自体が将来一つの大きな円山四条派データベースとなり得るのではないかと考える。また、明治時代初期にこれらの作品の大部分を収集したアメリカ人、アーネスト・F・フェノロサ(1853-1908)とウィリアム・S・ビゲロー(1850-1926)が、この画派に対してどのような考え方を抱いていたかを考察することも、本コレクションの正しい理解において不可欠な要素となろう。MFAB所蔵日本美術の大きな特徴として、彼らの旧蔵品は基本的に1880年代の日本にて集中して蒐集されていることが挙げられ、そのため特に明治初期に活躍していた同時代画家の作品に関しては、それ自体がある程度信頼できる基本資料となりえる。特にフェノロサに関しては、彼の著作『東洋美術史綱(原題:Epochs of Chinese and Japanese Art)』などにこの画派に対する豊富な記述を残しており、それらを参照することによって彼らが抱いていた円山四条派観にある程度近づくことが可能となろう。現在まで100年以上の長きに渡り、研究対象としてほぼ手を付けられることのなかったMFAB所蔵のコレクションを今ようやく包括的に整理・把握することは、今後の円山四条派研究にとっても大きな礎となりうると考える。その第一歩として、まずはこの膨大なコレクションに含まれる個々の画家・作品の調査を進めることで、その内容や傾向を把握したい。そして次に、フェノロサらがいかなる思想や嗜好を持って作品を蒐集したかを、彼の著作の記述等を参照しつつ考察する。以上二点を経た上で、特に優れたものや美術史上重要な作品の紹介・研究を行う。またMFABの他にも、アメリカには優れた円山四条派作品を有する美術館が少なくない。この機会にそれらの調査も同時に行い、そして「アメリカに存在する円山四条派作品の特徴とその形成過程」というより大きな視座からも考察ができればと考えている。―55―
元のページ ../index.html#70