ニュー・ディール政策時代の先住民画家によるオルタナティヴな風景表象―「インディアン画」によるナバホ居留地の風景画について―構想:本研究は、陶磁器をはじめとする工芸品に着目するが、壁画の画題と器物の関係性や墓地出土資料を組み合わせることで、宋・契丹・金・元時代の人々の日常的な生活の営み、伝統的価値観、美意識の復元を目指す研究の一環として行うことを研究の基本構想としている。壁画墓の内容は、当時の社会の習俗や文化、価値観が表されている可能性が高い。しかし当該期の墓地から出土する陶磁器の酒器は、必ずしも壁画墓に描かれた器物と同様の造形や意匠を有していない。つまり観念的な部分と実際の生活の中で差違が生じている。また元時代の壁画に描かれる事例は減少するにも関わらず、北宋時代末期に酒器としての位置づけが確立した梅瓶は、明清時代には祭器としても重要な位置づけになっていることが予想される。本研究は、将来的にこの現象の背後にある価値観や美意識の解明を目的とした研究構想の一環として位置づけている。研究者:PhD Candidate, Dept. of Art, Univ. of New Mexico中山龍一本研究は、美術史研究における周縁化された先住民芸術家の地位を問題とする。20世紀前半の合衆国南西部の先住民美術に関連する先行研究は、大衆文化における先住民の表象や、先住民美術の地位向上を後押しした白人文化エリートを焦点とする傾向にあり、制作者の先住民芸術家の主体的な選択は、議論の枠組みの中で見過ごされてきた。インディアン画の研究についても、ドロシー・ダンの指導や展覧会の分析が中心で、個々の作品の固有の表現を、具体的な歴史的文脈に位置付けて詳細に分析するような研究は依然としてごく少数である。一方、日本における先住民美術の研究は、美術史よりも地域研究や文化人類学、社会学の枠組みでなされる傾向にある。筆者がこのテーマに取り組むことには、日本の美術史研究において、日本の美術制度と殖民・植民地主義との関わりを、グローバルな視点で捉えなおし、批判、検証する議論を活発化させる意義がある。本研究は、インディアン画によるナバホ居留地の風景画を、殖民国家におけるオルタナティヴな先住民の土地の表象として位置づける。ルーズヴェルト政権下の1930年―89―
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