鹿島美術研究 年報第38号
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研究目的の概要①日本美術における「美男画」の系譜②沈没船の積荷にみる古代ローマの美術品の流通(2021年)―マハディア(チュニジア)の例を中心に―研究者:島根県立石見美術館専門学芸員本研究の目的は、日本の美術において男性がどのように表現されてきたか、またそこにどのようなまなざしが注がれてきたか、そして現在どのような表現が生まれているかを探ることにある。肖像画、物語絵、浮世絵、近代絵画など個別に研究されてきた美術史の成果と、現代アートやサブカルチャーを、「男性の美」というテーマによって通覧することで、それぞれの時代や階層における「好ましい男性像」のあり方と受容のされ方の変遷、差異、あるいは共通項が見いだせるものと考えている。現代アートの領域において「美人画」というジャンルや、現代における「理想の男性像」の役割を意識した制作を行なっている作家に注目することは、美術史やジェンダー論に新たな視点を与えることになるだろう。また、マンガ、アニメ、ゲームにおけるキャラクター文化を、20世紀以前の美術や大衆文化の延長上にあるものとしてとらえることは、これらを商業的なコンテンツとしてのみならず、日本文化史の中に位置付けることにつながると考える。研究者:東京藝術大学非常勤講師「沈没船の積荷にみる古代ローマの美術品の流通:マハディア(チュニジア)の例を中心に」と題した本研究の目的は、近年進展する水中考古学における沈没船研究、美術史学における古代ローマの美術品蒐集研究、そして歴史学における地中海交易史の成果を踏まえながら、ギリシア文化圏からローマ世界へと移動した美術品を具体的に提示し、注文主や制作工房、そして流通の仲介を行う美術商や運輸業者といった人―17―川西由里瀧本みわⅢ.2020年度「美術に関する調査研究」助成者と研究課題

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