清朝陶磁の青磁研究的とする。なお、具体的に以下のように示す。①現時点では成都市内で出土した南朝造像における天王像を改めて確かめ、特に大画面のいわゆる経変図に描かれた各図像の内容を正しく捉え、従来の研究に取り上げられなかった作例についての確認を行う。②これらの南朝天王像の作例には、方座に遊戯坐あるいは倚坐した特有な姿勢をとる例が多数見出される。これを手掛かりにし、中国内地及び西域の関連作例との比較考察を行う。③以上のことを踏まえて、関連文献史料の分析によって、天王像が当時この地域でどのように信仰を集めたかということについての考察を行う。④唐宋時代に盛んに造立した天王像に与えた影響の可能性についての検討を行う。以上の考察によって、対象作例における地域的性格を明らかにする。研究者:岡田美術館学芸員佐藤有沙本研究は、清時代雍正(1723~35)・乾隆(1736~95)年間の景徳鎮官窯において、いわゆる「倣青磁」や「青釉」と呼ばれる、青磁の作品に光をあて、その特徴や様式の変遷を探り、青磁史の中での位置付けを考察する。加えて、わが国における、清朝官窯の青磁の鑑賞と収集の動向について明らかにする。次のとおり、研究の深化を試みたい。はじめに、清朝官窯の青磁の特質を見出す。従来の中国陶磁研究では、清朝官窯の青磁は、単色釉磁器の一つと見做されている。その特徴として、雍正・乾隆両帝の宋文化への憧憬、すなわち汝窯や南宋官窯、龍泉窯の青磁愛好や、古代の文物を尊ぶという、尚古趣味がしばしば指摘されている。例えば、「倣汝窯青磁水仙盆」(雍正~乾隆年間、台北国立故宮博物院蔵)は、器形と釉薬の色・質感において、北宋汝窯の「青磁水仙盆」を忠実に再現した好例である。翻って、雍正官窯の「青磁柑子口瓶」(岡田美術館蔵)は、南宋の砧青磁を思わせる粉青色の釉薬に、器形は、青銅器の蒜頭瓶を手本としていながらも、口作りを蓮花形に翻案した、前代に見られない独自の形を創り出している。このように、清朝官窯の青磁は、釉薬の色・質感、器形において、さまざまな倣古と創造の要素が見られることから、その特質や傾向を浮き彫りにする―46―
元のページ ../index.html#61