鹿島美術研究 年報第38号
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ナバレーテ《聖家族》についてになる。二つ目に、仏像の加飾化において人の身体を飾ることと、仏像の身体を飾ることにどのような重なりと違いがあるのか、を検討することにより、中国的様式をもつ仏像表現の定着・定型過程をも明らかにしてゆくことができると考える。有益な視点を提供できれば、仏教美術史研究とも論点を共有することになる。三つ目に、朝鮮半島(三国)や日本列島(倭)と比較を可能にする。両晋期の装身具体系に見通しが得られれば、周辺諸地域が新たな社会秩序を構築するなかで、身分秩序と連動した中国の装身具を如何に利用したかもみえてくる。文献史学研究で応に指摘される府官制(中国政治制度)を導入した社会秩序の構築と対比した検討も可能となり、東アジア交流史にも新たな論点を提示する可能性も秘めている。研究者:神戸大学大学院人文学研究科博士課程後期課程本研究はエル・エスコリアル修道院で宗教画家として成功したスペイン人画家ナバレーテの円熟期の作である《聖家族》(1571-75年)についてその図像とスペイン・ハプスブルク家をめぐる同時代の状況を照らし合わせて分析することでその意味内容を検討し、作品解釈を行うことを目的とする。(意義・価値)本研究はこれまで国内外で豊富に研究されてきたエル・エスコリアル修道院内部装飾研究に属する。ナバレーテ作品を通して、フェリペ2世がイタリア人画家らを招集する以前の、初期構想という建造目的の根源に関わる重要な問題を明らかにする点できわめて意義のあるものである。また本作の分析を通して、当時芸術の中心地であったイタリアの画家たちではなく、スペイン人画家ナバレーテを重用した理由を解明することは16世紀スペインの特色ある宗教絵画観を明らかにすることにつながる。―66―河本真夕1995年に初の展覧会(Fernández Pardo, Francisco (ed.), Navarrete El Mudo: pintor de Felipe II (exh. cat.), Centro de exposiciones y congresos y museo "Camón Aznar", Zaragoza.)、1999年に初のモノグラフの出版(Mulcahy, Rosemarie, Juan Fernández de Navarrete, el Mudo: pintor de Felipe II, Madrid.)、2017年からエスコリアル修道院において企画展示(García-Frías Checa, Carmen, Navarrete el Mudo nuestro apeles español en El

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