鹿島美術研究 年報第39号
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― 27 ―① 初期洋風画発見の状況を検証する―茨木のザビエル像・マリア十五玄義図を中心に―研 究 者:■木市立文化財資料館 学芸員  桑 野   梓本研究では、「聖フランシスコ・ザビエル像」「マリア十五玄義図」など、大阪府■木市で発見されたキリシタン遺物について、その作風や図像の系統について共通点・相違点を見出し、また形状などから制作当初における用途等についても検討を加える。同時に発見、撮影、売却、修復などの■った歴史を追うことで、美術史的な価値について歴史的観点からのアプローチで補強を行い、■木のキリシタン遺物を総合的に考察することを目的とする。先行研究では、国立歴史民俗博物館「南蛮美術総目録〔洋風画編〕」(『国立歴史民俗博物館研究報告』第75集、1997)をはじめとして、神庭信幸・小島道裕・横島文夫・坂本満「京都大学所蔵『マリア十五玄義図』の調査」(『国立歴史民俗博物館研究報告』第76集、1998)、神庭信幸「国立歴史民俗博物館特定研究南蛮関係資料研究班による神戸市立博物館所蔵『聖フランシスコ・ザビエル像』の調査に関する概要」(『神戸市立博物館研究紀要』第16号、2000)武田恵理「南蛮美術研究東家本『マリア十五玄義図』支持体の再現研究」(『百万塔』、2010)など、個々の作品について科学的調査・分析を行い、共通する素材や技法などを見出してきた。また塚原晃「神戸市立博物館所蔵『聖フランシスコ・ザビエル像』の保存状態と表現解釈』」(『神戸市立博物館研究紀要』第35号、2019)においても修復の履歴について検討が加えられている。ただし、これらのキリシタン遺物は、それぞれに異なった歴史を■って今に至っているため、特に発見後の修復等についてはそのタイミングがそれぞれの遺物で異なることが想定される。そのため、本研究ではまず発見から現在に至るまでの歴史を詳細にみていく。既に『新修■木市史年報』(第4号、2005・第15号、2017)における高木博志の論考において、キリシタン遺物所有者宅の発見後の書簡等の資料や、発見に寄与した藤波大超氏Ⅲ.2021年度「美術に関する調査研究」助成者と研究課題  (2022年)研究目的の概要

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