― 37 ―⑧ 敦煌石窟供養者像の研究 ─その造形と信仰─⑨ 1939年ナチ・ドイツへの日本美術作品寄贈から見る日独美術交流研 究 者:大妻女子大学・青山学院大学 非常勤講師 菊 地 淑 子この研究は、中国仏教石窟の供養者像の形式・様式変遷が、在家信者の信仰形態をどのように反映しているのかを解明するという目的のために行うものである。そのための出発点として中国仏教石窟の中でも敦煌石窟を研究対象とする。石窟寺院の洞窟に表された供養者像は、石窟の造営にあたり、寄進をした人の肖像と一般に認識されている。それを踏まえた上で、供養者像を含む宗教美術は信仰に根差したものであるからこそ、その研究は信仰内容にまで論及することが最終的には望まれている。この研究は供養者像という宗教美術の研究にあたり、その形式および様式の変遷が、在家信者の信仰形態との間に如何なる関係があるのか、それの解明を目指すことによって、宗教美術の信仰内容にまで論及する可能性をもった、意義のある研究である。また供養者像という美術と、法会との関係が指摘されている敦煌文書という文字資料の双方を扱い、造形と文字の両領域にわたる総合的な美術研究の地平を開く価値を有している。この研究の主眼は、これまでに応募者が一定程度資料を集めてきた敦煌石窟の供養者像にあるが、更にその他の中国石窟をも視野に入れ、最終的にはアジアの広範囲を対象に在家仏教信者に関わる造形美と信仰の問題を考えるという構想をもっている。研 究 者:筑波大学 芸術系 研究員 江 口 みなみ本研究は、1939年の第十一回ナチ党大会に際し、日本画作品61点および室内装飾品1点が日本からドイツへ寄贈されたことについて、その背景や経緯を明らかにし、日独の美術界と政財界を跨いだ人的ネットワークの実態、そして美術作品の寄贈にみる文化的および政治的意義について考察する。ナチ党の党大会とは、リーフェンシュタール監督の記録映画にも明らかなように、約一週間をかけて集会やパレード等さまざまなイヴェントを行う大規模な祭典であり、これまで多角的な分析が進められてきた。本研究の成果により、党大会における
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