■ ■■■■■■■■■画 ■■■■■■■■■■■行』など明治末頃に続々と出版された紀行画文集に継承されている。京都の画家たちも頻繁に写生旅行に出かけており、たとえば『京都日出新聞』には明治30年代から大正期にかけて多くの洋画家が、時には日本画家と連れ立ち写生旅行に出かける様子が報じられている。日本の近代的風景画が円熟期を迎えたのはまさにこの時代の水彩画によるところが大きく、本研究では作品だけでなく、足を運び景色を求めたその足跡も重要な考察対象と捉える。さらに日本の風景を描いた水彩画は海外特にアメリカでの人気が高く、牧野克次や霜鳥之彦など京都の画家による海外展開も注目される。これら海外での動向もふまえ調査を実施したい。研 究 者:碧南市藤井達吉現代美術館 学芸員 田 邉 咲 智本研究の目的は、菱田春草の絵画表現にみられる「同時代性」を解明することにある。「日本画と洋画」「米・欧州の西洋絵画」からの、直接的かつ間接的な影響関係を分析し、春草作品の一国主義的思考を越えた同時代的な特質を検討する。また、それらがその後の近代日本画にどのように影響していったのかを明らかにする。【意義】本研究の意義は、日本美術院の理想(思想)を介して、春草の近代日本画の同時代的な特質を「日本画と洋画」「米・欧州の西洋絵画」の枠組み越えた立場から検討することにある。従来の研究は、直接影響関係のある作品に限定して比較検討を進めてきた。また、日本美術院の理想(思想)をふまえて、実証的に作品を研究した例は少ない。春草研究を難解にさせている一つの理由には、直接的な影響関係を実証的に示す作品や二次資料が乏しいことにある。こうした問題を克服するためにも、あえてこれまでの研究とは異なる視点、すなわち、同時代性を主軸に春草作品を検討する。【価値】本研究は、日本美術史の領域を基礎としながらも、その周辺を取り巻いた諸外国の直接的かつ間接的な美術作品の影響関係を分析し、国際的に春草作品の特質を解明する独創性を有している。また、明治期からその後の近代日本画の特質にも一石を投じることができる。― 88 ―
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