【構想】A 朦朧体の同時代性 〜洋画・西洋近代絵画との比較〜①春草をはじめとする日本美術院の画家が、朦朧体に挑む契機をつくった岡倉の理想(思想)を改めて整理する。岡倉が、はじめて公の場に美術思想を示した東京美術学校(現在の東京藝術大学)、そして、岡倉が晩年に過ごした五浦(■城県天心記念五浦美術館)を中心に、資料調査を行う。②先行研究では、春草と大観の遊学前の朦朧体に関して、黒田清輝らの白馬会(外光派)との影響関係が指摘されている。しかし、具体的な作品分析や日本美術院の活動との比較がなされていない。このため、白馬会の関連資料を東京文化財研究所、黒田記念館にて収集する。③朦朧体が、ホイッスラーの「トーナリズム」の作風と同時代的な特質を有して展開した諸相について検討する。遊学中から遊学直後の作品や関連資料を■城県天心記念五浦美術館、福井県立美術館、水野美術館にて調査する。B 《落葉》における同時代性①《落葉》の制作にあたって、春草が着想を得た江戸琳派の花鳥画や木々の表現を分析する。細見美術館・京都国立博物館などへ調査する。②春草は、晩年に眼病を発病してから、植物や鳥類などのスケッチを数多く描いた。特に、近年発見された新資料《落葉》の構想ノートは、最重要資料となる。このため、所蔵先の飯田市美術博物館へ上記の資料を調査する。また、飯田市は春草生誕の地であるため、関連資料の調査もあわせて行う。③《落葉》の木々の表現や空間表現に類似する絵画は、同時代の日本画や洋画、さらにはジャポニスムを通じて日本美術に影響を受けた西洋近代絵画、そして、春草以後の近代日本画にも見出せる。同時多発的に生じた表現の要因を検討し、春草以後の近代日本画にどのように影響したのかを明らかにする。文献調査を行い、そして、必要に応じて作品調査を行う。《落葉》作品を所蔵する永青文庫、福井県立美術館、滋賀県立美術館、岡山県内の美術館などへ調査を行う。具体的な構想は、以下の通りである。― 89 ―
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