■ 19■0年■■■■■■■■■■■に関する研究■■■■■■画■美■■■■■■【研究調査の目的と意義】研 究 者:南カリフォルニア大学 映画芸術学科 博士候補生 中 根 若 恵本研究の目的は、戦後日本の視覚文化と主体性の関係について、エッセイ映画という具体的な対象を通して考察することで、映像における主観性の美学と政治学に関する議論を発展させることである。本研究の意義は主として次の2つの研究領域への貢献としてまとめられる。⑴ メディアアート研究上の意義:主体性と視覚文化に関わる議論エッセイ映画の美学と政治学に関するこれまでの研究(Michel Renov, W.J.T. Mitchell, Nora Alter)は、主に欧米圏の実践や理論を対象としてきた。日本という地域的枠組みに注目する本研究は、これまでに蓄積されてきた視覚性と主体性に関わるメディアアート研究の領域へ、新たな視座からの議論を提供できると考える。⑵ 文化史研究的意義:70年代日本の映像表現の文化的・政治的転換についての議論1970年代以降の自主映画領域における表現を、政治的コミットメントの不在による美的・政治的価値の「衰退」と見る一連の研究(Nornes, Furuhata)を批判的に検討し直すことによって、本研究は、エッセイ映画の出現と興隆を条件づける社会的・歴史的な要因に関する微細な議論の構築を目指す。例えば、かわなかのぶひろ、鈴木志郎廉、萩原朔美、原将人、佐々木美智子らによるエッセイ映画の制作・流通・受容は、実験映画、美術、そしてドキュメンタリーという多様な表現領域が交差する地点で実践されてきた。その意味で、60年代の自主制作映画研究が想定してきた、社会的問題を提示するドキュメンタリーと、鑑賞行為を通じて政治運動へ参加する観客という従来的な枠組みでは、本研究が対象とする個々のテクストやその背景をめぐる複雑な様相を十分に理解することはできない。そのため本研究は、個々のエッセイ映画がどのようなテクスト的な特徴を持っているのか、そして、個々の作品が当時の時代状況にどのように位置づけられるのか微細な視野で検討することで、1970年代の日本における映像の文化的・政治的転換についての議論を深化させる。具体的には、セグメンテーションやデクパージュ等の方法によって作品を分節化して記述し、個々の作品に見られる共通性や差異を、イメージと言語の関係に注目して分析する。― 99 ―
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