鹿島美術研究様 年報第40号(2022)
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■ ■■■■■■■■■に関する研究 ■■出■■■■■■に■察する本研究は、近代における日本表象の研究に新たな視座を提供できると考えている。研 究 者:似鳥文化財団 小■芸術村 学芸員  金 澤 聡 美本研究の目的は、以下の3項目にまとめられる。① 小説挿絵制作のプロセスをめぐる研究における一事例の提示新聞や雑誌の連載小説のための挿絵は、読者である一般大衆に小説の内容を視覚的に伝えることを目的に作られる。その制作にあたっては、元となる「小説本文」があり、基本的には画家が小説を読み込んだ上で行われる。よって小説挿絵制作のプロセスについて研究することはすなわち、文章という形で与えられたストーリーやその詩情をどのようにイメージ(図像)化するのかを探ることであり、ひいては文学と美術の関わりについて言及することのできる重要なテーマである。しかし、近代日本の連載小説挿絵制作のプロセスについて具体的に言及されている研究事例は確認できない。よって本研究は、この研究分野における先駆的な一事例を提示するものになることが期待できる。② 小磯良平の挿絵芸術の全容解明に寄与する小磯の挿絵研究において下絵は未開拓の分野である。新出の素描の中から挿絵の下絵として制作されたものを特定することで、小磯の膨大な挿絵芸術の全容解明に寄与することができる。また、下絵の研究を進めることで原画のみでは知ることのできなかった制作プロセスが明らかになり、小磯の挿絵研究に新たな視点をもたらすことができる。③ 小磯良平の人物表現における特質を挿絵下絵から読み解く現在までの調査で、小磯は挿絵制作の際、同じモチーフについて微妙な変更を加えながら何枚も下絵を描く場合があることが分かっている。それは人物の表現、特に人物のポーズに関係するものが圧倒的に多い。例えば、向きを確かめるように、手足のみを抜き出して描いた下描きが複数の小説の下絵で確認でき、小磯の常套手段であったことが読み取れる。また、原画として描き終わっていたが何らかの理由で採用しなかった作品(原画には必ず書かれている「第○回」という赤字が枠外に書き込まれた―  1 ―

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