■ ■■■■■■■■■■■■に■る■■■■■■■研究作品)なども複数発見されており、挿絵掲載までの過程で小磯によって行われたさまざまなレベルでの取捨選択を下絵から知ることが可能となっている。それらを元に制作プロセスを調査することで、何を描いて何を描かないのか、という小磯良平の人物表現における特質を明らかにすることができる。これがひいては、人物画家として知られた小磯の画業を再検証する際の新たな端緒となるだろうと考える。研 究 者:静岡県立美術館 主任学芸員 浦 澤 倫太郎本調査研究の第一の目的は、「伊豆沿海真景」の実物に対し、撮影を含む調査を行うことで、用いられた筆法や彩色技法の詳細を明らかにし、村松以弘の実景図制作研究の基盤を作ることである。同時に、本作各図を伊豆半島各地の実景と比較し、以弘による実景図制作の手法についても考察を進めたい。そして、県内各地に所蔵される、以弘の実景図を中心とした作品も調査し、本作の比較対象としたい。これらの成果を踏まえ、以弘の生涯、特に画業の前半の更なる解明を進めることを最終的な目標とする。伊豆半島を描いた本格的な実景図として、師の谷文晁による「公余探勝図巻」(東京国立博物館蔵)が先行して制作されており、本作各図の表現について、何らかの影響があった可能性も考えられる。本調査研究では、「公余探勝図巻」をはじめとする、文晁やその周辺で制作された実景図との比較を通じ、本作を江戸画壇における実景図制作の展開の中に位置付けることも計画している。更に、本調査研究の成果が、伊豆半島の景観に関する歴史研究に寄与できる可能性がある。本作各図には、地名についての細かな注記があり、地理について詳細な情報を教えてくれる。加えて、本作の題材となっている場所のうち、伊豆半島北西部の三津、同南端の石廊崎は、他の絵画作品でも描かれている例が確認される。伊豆半島に点在する景勝地が、一般に知られて行く過程をはじめ、郷土の景観の変遷を■るうえで、貴重な材料となりうる。また、分野は異なるものの、掛川藩の藩政史研究においても、本調査研究の成果を活かせるかもしれない。第2代太田資愛から第5代資始にいたる、4代の藩主が治めた期間には、以弘の他にも、松崎慊堂が藩儒を務めたほか、歌人・国学者の石川依平― 2 ―
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