■ ■■関■■■に■■る■■■■■■成■■■■■■■■成■■関■に■目■■■「意義・価値」研 究 者:観音ミュージアム 学芸員 宗 藤 健中世関東地方の観音像について、従来のいわゆる鎌倉地方彫刻史研究の文脈における様式面での在地性の強調と、霊験仏信仰の全国的展開という普遍性のなかに諸作例を位置づける視点とを統合し、より多角的な視野から当該期の造像の実態把握を試みる点が、本研究の意義である。坂東三十三所を直接の主題とした研究助成としては、すでに2018年度の大澤慶子氏の採択実績があるが、大澤氏の研究が主として下野国内の作例を対象とするのに対し本研究では関東全域を対象とする点、また縁起研究を通してナラティヴとイメージとの有機的連関に目を向ける点において、本研究の新規性を認めうると考える。また、鎌倉地方の観音像については作品論・作家論に主眼をおく多数のモノグラフィーが蓄積されているが、これらは法衣垂下や遊戯坐などいわゆる「宋風」が顕著な五山派禅刹の作例や、東国に「下向」した鎌倉時代前期の奈良仏師または鎌倉時代後期以降の善派・院派仏師の作例など、北条得宗家や鎌倉公方足利家を庇護者とする禅律体制下での造像に関する研究が過半を占め、在地領主層としての東国武士を願主とする造像の事例研究は相対的に乏しい。本研究では、在地霊場における在地有力者の造像を扱うことで、官寺あるいは準官寺的性格の寺院における造像とは異なる、多元的な造像の実態を明らかにしたい。この試みはまた、中世の関東地方という特異な政治的求心性を帯びた地域の信仰史の一端にアプローチするものでもあり、将来的に本研究の成果が他地域の事例との比較検討に援用されることを通して、中世の日本列島における霊験仏造像の、より巨視的・立体的な理解に寄与することが期待される。「構想」本研究の主たる検討対象として、縁起・檀像風彫刻・在地造像の3つのトピックを設定する。まず、関東地方の観音霊場の縁起は、おそらくは鎌倉時代後期以降、西国三十三所の札所でもある長谷寺(奈良県桜井市)の縁起にもとづく霊木流着譚や、同じく粉河寺(和歌山県紀の川市)の縁起にもとづく殺生人発心譚を主要なモチーフとして、真― 52 ―
元のページ ../index.html#65