■ ■■■■■■■■■■■■に■■■リー・ローランサンの肖像》(制作年不詳、うろこの家&展望ギャラリー、兵庫県)の四点である。これらは従来、人物間の結びつきを示す作例として度々言及されながらも、制作された背景や意義についてはほとんど見過ごされてきた。しかし、例えばラブルールの作品には、1913年のアンデパンダン展で高い評価を受けた《優雅な舞踏会》(1913年)を描くローランサンの姿が捉えられ、制作をめぐる重要な場面の記録とわかる。一方、ピカビアとエルンストによるローランサンの肖像画では、よく類似した機械の外観をもつ人物表現がなされ、絵の表現を通して三人の関係性が垣間みえる興味深い一例となっている。さらにアマン=ジャンのローランサンの肖像画は、とりわけ先行研究に乏しい作品であるが、ローランサン自身による人物画に似た表現がみられる点などが注目される。これら複数の画家による作品を取り上げることは、ローランサンの位置づけを見直しその再評価を促す契機となるだけでなく、20世紀パリの複雑な美術界の様相を新たな面から紐解く一端ともなり得るだろう。以上から本調査研究では、同時代の画家たちがローランサンをどのように捉え、いかなる意図をもって絵に表現したのかを、ローランサンや関連作家の作品などとの比較をふまえて考察する。なおその過程で、ローランサンが描かれた他の作例が発見された場合、重要なものは随時研究対象に加えていく。そして、当時パリを中心に出回っていた新聞や雑誌からローランサンに関する言説を確認するとともに、各作品への批評や、画家たちの手稿などを綿密に調査することで、今までにない総合的な視点でローランサンをめぐる同時代評価の実相とその位置づけの解明を目指す。研 究 者:神戸大学大学院 人文学研究科 博士課程後期課程 河 合 由里絵「扇面法華経冊子」はこれまで、主に人物表現の特徴から平安やまと絵の典型として位置づけられてきた。本研究では本作品の自然景の描法に着目し、同時代のやまと絵や装飾経のそれと比較して特異性を明らかにした上で、五代・宋時代の絵画や高麗の工芸品などの中国大陸・朝鮮半島からの影響について検討することにより、東アジアの文物を受容した当時の我が国の状況と照らし合わせながら制作背景について明ら―■国■■■■■■■■美術■■■■■関■■■―― 62 ―
元のページ ../index.html#75