■ ■■■■(1569■1633)■■■■■■■■(■■■■)■■■■■■■■■その成立についても考察を可能にしたいと考えている。研 究 者:京都国立博物館 列品管理室長 永 島 明 子本研究は、京都の禅宗の古刹である南禅寺が伝える外国製の椅子とその類品の比較分析を通じて、この椅子の生産地やおよその製作年代を比定すると同時に、関連文献の探索と精査を行い、椅子の来歴を確定することを目的とする。これまでその存在さえほとんど認知されてこなかった本品について、来歴の確定を通じて、その価値を掘り起こし、世界史のなかに位置づけようとするものである。本品は、大航海時代の西洋人が各地の商人や職人と協働し、「ご当地技術」を活かして開発した輸出製品の一例と捉えられるが、そのような製品が京都の古刹に大切に伝えられてきたことは世間には知られておらず、西洋の美術工芸史研究者には大きな驚きをもって受け止められることが予想される。また、以心崇伝という日本の政治史上も有名な人物と来日した西洋人に関係する品であることが明確になれば、日本の外交史上も見過ごせない史実となるだろう。さらに、以心崇伝の活躍期に照らせば、アジア製の輸出用黒檀家具の類品のなかでも世界最古の基準作例となるかもしれず、この確定は、17世紀前半に■る作品を探し求める西洋の研究者たちにとっても待ち望まれるものといえる。筆者の所属機関では、こうした高価な黒檀製の家具の代替品として、オランダで模造された樫に黒色塗料を塗った椅子や、黒檀製をさらに高級化した日本の蒔絵螺鈿製の西洋人向けの椅子を収蔵している。こうした品々と合わせて本品が展示紹介される際、西洋人から日本の高僧に贈られたことが明確にされていると、大航海時代の人や物の動きのダイナミズムのなかに、日本も、以心崇伝も、これらの椅子も、みな置かれていたことが実感されやすくなるはずである。目論見どおりに本品の価値が再認識されれば、本品の修理費等も申請しやすくなり、本研究は、現在では部材が外れたり、全体が汚れたりしている本品を、未来に伝えることにも大きく貢献できると思われる。― 81 ―
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