鹿島美術研究 年報第10号別冊(1993)
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Vasari氏は父親から受け継いだ作図1ペルセオ・ヴァザーリ夫妻② 大正期の新興美術とヨーロッパの前衛美術(その2)研究者:筑波大学芸術学系助教授五十殿利治本研究の主題は平成元年度と同じく,筆者がベルリンの「日本未来派」と仮称している村山知義,永野芳光,和達知男の活動,とりわけヨーロッパの前衛美術家(主としてダダイストや構成主義者)との交流を跡づけることである。前回のベルリンとデュッセルドルフでの調査(1989年10月)においては,彼らの碁本的な展覧会活動,すなわち1922年3月の大未来派展,5月の第一回デュッセルドルフ国際展,そして9月の連続個展,さらに10月の無鑑査展,などについて,雑誌論文のほか,シュトゥルム文庫の資料,さらに新聞記事などを入手し,その結果を公表することができた(筑波大学芸術学系研究報告15輯)。このたびの調査は,第一次世界大戦後,再び活動を開始したマリネッティ率いるイタリア未米派のベルリンでの拠点を提供した,シチリア出身の詩人ルッジェーロ・ヴァザーリRuggeroV asariの遺族のもとに残された資料について,また「日本未来派」の周辺にいた,ロシア生まれのアメリカ画家ルイス・ロゾウィックLouisLozowickの資料(ワシントンのArchivesof American Art蔵)について行った。その結果,村山たちの活発な活動とその背景にあったドイツにおける美術家どうしの盛んな交流を示す若干の文書ならびに記録を入手するとともに,新知見を得ることができた。(調査成果の一部については本年5月末の美術史学会全国大会でも「ベルリンの『日本未来派』」と題して発表した)。ここでは,とくにイタリアで入手できた主要な資料について簡単に触れることとする。ルッジェーロ・ヴァザーリの子息ペルセオ・ヴァザーリDr.Perseo 品ならびに文書をメッシーナの自宅に長年にわたり整理保管しており,氏の好意もあって1992年11月の調査は予想以上の成果を得た(図1)。-7

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