⑰ 明治期の金工家及びその作品の調査・研究—博覧会出品作品について研究者:東京国立博物館資料部研究員横溝廣子幕末から明治期にかけて世界各地に残っている膨大な在銘金工品の数の割には,これらについての情報があまりにも限られていることがきっかけとなって,この時代の作家名とその作品について物語ることの多い内外の博覧会に関する文献や写真等から得られる情報をまとめ,近代金工家および作品の基礎資料として整備することが本研究の大きな目的の一つである。これらの博覧会関係資料を手がかりに作家の活動や作品の所在を確認し,研究を進めつつある。調査は金工を中心に行なっているが,他の分野にとっても貴重な資料を見いだすことになり,近代の美術工芸史全体にとって有効な研究資料になるであろう。まず,金工作品の調査について報告する。過去2年間で調査した作品は357点で,その内訳は次の通りである。東京国立博物館41点,高岡市立美術館21点,石川県立歴史博物館10点,富山郷土博物館12点,金沢卯辰山工芸工房5点,個人蔵91点(7箇所の合計),フィラデルフィア美術館8点,ウォルターズアートギャラリー58点,スミソニアンインステチューション7点,メトロポリタン美術館15点,ヴィクトリアアンドアルバート美術館41点,オーストリア応用芸術美術館25点,民族博物館(ウィーン)23点。現在まで調べたところ,博覧会出品作といえる金工品は以下に述べる85点である。これは,所蔵者の記録,第一回および第二回内国勧業博覧会出品作品の写真帖,ウィーン万国博覧会出品作品の写真帖および目録,フィラデルフィア万国博覧会(1873年)会場写真および出版物,パリ博(1900年)出品作品写真帖,シカゴコロンブス博覧会会場写真,セントルイス博会場写真および出品作品写真帖などの資料をたよりに判断するものである。明治六年(1873)ウィーン万国博覧会◆薄端花瓶一対横山弥左衛門作銘「加州住北岳翁横山孝茂造」♦雷鱗文水滴本間琢斎作♦筆筒神山得斎作銘「得斎」♦燭立百瀬惣右衛門作鋳銘「重郷」♦罐子-162-
元のページ ../index.html#169