像を盆子に仕立てさせた作例(重文•長崎市立博物館蔵,図10)と類似する新出の漆出す土壌となった。器を紹介するにとどめたい(図11,12)。トランプ図様の,ゲームに用いる得点計算用の小片収納箱がそれで,カウンターと称される。近年オランダで見出されたものである。貝の裏側に彩色,墨線の描写が施されている点は,全く其扇像の盆子の技法と共通している。長崎の輸出漆器の技法が,シーボルトと関連するこの盆子に用いられているわけで,この盆子が技法的に孤立したものでないことが,本作の出現によって立証された。このカウンター収納箱は19世紀前期の制作と考えられ,其扇像の盆子(シーボルトが持ち帰ったもの)の年代を相互に保証しているのである。京阿蘭陀徳川美術館にオランダ製と特定されて来た染付陶器による花生と台が所蔵されている。筆者が実見したところ,材質や様式から判断して江戸時代後期の京都で制作された,いわゆる「京阿関陀焼」であることが確認できた。同収納箱には「天保三辰三月/御立寄御用御買上」とあり,「耳附阿蘭陀焼御花活」とある。箱が新調されたのが10年図11螺細トランプ図カウンター用箱(開いたところ)オランダ・個人蔵19世紀の輸出漆器については,本稿では,シーボルトが日本人妻其扇と娘イネの肖ごうし-220-図12図11の小箱部分そのぎ
元のページ ../index.html#227