@ 日本近代風景画ー一岡田三郎助と藤島武ニ―研究者:佐賀県立美術館学芸員松本誠一本研究の目的は,岡田三郎助の風景画の研究を中心に据えながら,最終的には,そこに藤島武二の風景画を対比することで,より明瞭に,岡田の風景画の特質をみきわめようとするものである。研究スケジュールとしては,当面,岡田の風景画の調査を行なうことが今後の研究の基礎となってくる。また平行して行なってきた近代洋画の風景画の作品調査,および用語としての「風景画」の研究についての成果は,「風景画の成立」として近く発表の予定である。ここでは,前者について今回の調査による知見として二つのことを報告したい。これらのことは,岡田の風景画を考える上で重要と思われる。ひとつは,大正中頃から昭和の初めにかけて,岡田がしばしば題材とした「水辺の柳」についてである。岡田が「水辺の柳」を題材に取り扱った作品のなかで,代表作とされるのは,1930年(昭和5)の岩絵具による《楊柳》(72.7 X 100 宮内庁蔵図版1)である。今回の調査では,本作品に至る過程のいくつかの作品の所在を確認するとともに,これら一連の「水辺の柳」をえがいた作品の原点とも言うべき作品を見出すことができた。まず,「水辺の柳」の先駆けをなすものとして,これまで所在が知られていたものとして《水辺の柳》(60.6 X 80.6 1927年図版2)と《水辺の並木》(33X53.61927年図版3)図版1《楊柳》図版2《水辺の柳》-244-
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