鹿島美術研究 年報第10号別冊(1993)
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がある。さらに,ここにあらたに《柳》(42X 63 1919年個人蔵図版4)を加えることができた。なお,制作年は《楊柳》よりも1年下るが,《水辺》(32.5 X 52. 5 1931年個人蔵図版5)についても《楊柳》からの様式上の展開を考察する上で欠かせない作品である。これらの作品に共通して見られることは,いずれもが岩絵具でえがかれ,金地あるいは銀地を背景として,樹葉に緑青を主体に群青を混ぜ,樹幹はこげ茶色に代諸色をうす<掃いていることである。「水辺の柳」という主題の由来については,十分に考察されてきたとは言えない。しかし,これらの作品がいずれも岩絵具でえがかれていることは,なんらかの先行する作品が在ったことを予想させる。岡田はその点において油絵画家であった。すなわち,岡田においては,油彩画として一度えがいた作品をもとに,その延長上に岩絵具の作品があるのである。図版3《水辺の並木》図版4《柳》図版5《水辺》図版6《水辺の柳》-245-

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