配されている。たとえば傑刑の場面でも,十字架の立つ丘が示され,地面には様式化された草がところどころに生え,馬に乗る兵士,槍をかぎす兵士,それに混じってマリアを囲む一行が示される。このようにある現実の中の具体性を持った場面が,厨子の中をところ狭しと充填する方式は,ネーデルラントの祭壇に顕著な特徴である。それはこの作例のように,各場面が整然と区画される場合もあれば,全体として一つの情景のように連続性をもって示される場合もある。いずれにしても,厨子内における多人数による物語的(ナラティブ)な表現法という点で,<七つの悲しみの祭壇>はネーデルラント式の系譜につながるのである。図5カルカール聖ニコライ教会く受難の祭壇〉(主祭壇)1500年頃A. V.ツヴォレ,L.ユッペ作図7ローテンプルク聖ヤコプ教会く主祭壇〉1466年F.ヘルリン作図6クレーヴェ司教座教会く十字架祭壇〉1550年頃アントワープで制作-84-
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