鹿島美術研究 年報第10号別冊(1993)
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役割もあったと考えられる。本格的な青磁として登場してきた古越磁は三国時代から西晋時代の神亭壷において,もっとも自由なそして土着的な造形性を認めることができる。あるいは,洗練された造形として,東晋時代の天鶏壷に代表させることができる。どちらも,青磁によって,はじめて実現し得る造形である。器の形や鋪首飾など金属器に倣うことがつづいたが,その呪縛から解かれた造形,陶磁器のみにおいて表現し得る造形をそこに認めることができるだろう。陶磁技術の着実な進歩が,このような造形に結実しているといえる。表現されたものの種類は盤や鉢,動物形,人物像など,副葬品あるいは実用品として変化に富んでいて,単に金属器などの写しには止まらない表現力の豊かさに溢れている。古越磁は本格的な青磁として登場し,中国南部一帯に技術が伝わり,更には北方青磁の開窯にも影響を及ぼしたかもしれない。古越磁は造形的にも技術的にも青磁の源流となる重要なものである。-90 -

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