この石窟は東・中・西の洞窟3つからなる。東窟は山の中腹に,中窟と西窟は山麓にと,それぞれ点在して開竪されている。本研究に関わる小南海中窟〔図1〕の規模は奥行き1.34m,幅1.19m,高さ1.78mとかなり小さい。人ひとりがようやく入れるほどの大きさである。窟の平面はほぼ正方形を呈し,凹字形の基壇を設ける。窟頂は伏斗形である。北壁〔図2〕が窟の正壁であり,そこに仏坐像1謳(注6)と2比丘立像が造像される。いずれも頭部を欠損する。その腺像の左右両側に浮き彫りがつくられる。向かって左側に施身聞偶図浮き彫りか配置される。これは中肉彫りに表される。この浮き彫りには,「羅刹髪為帝繹/謝菩薩時」や「生滅滅已/寂滅為架」・「口羅刹□口口/口口是生滅法」と刻まれた題記がつけられる(注7)。向かって右側上部に仏説法図浮き彫りが配置される。この仏説法図は仏坐像1躯・菩薩立像1躯・獅子像1躯からなる。浮き彫りの下方に「天上天下元如佛十方世間亦元比/口口百□虚一切尤(天)有如佛者」という題記をつける。右側下部に比丘僧棚供養像浮き彫りがある。やはりこれにも「比丘僧桐供養」という題記がつけられる。図1小南海石窟中窟外観西壁〔図3〕には1仏2菩薩立像が配置される。いずれも頭部を欠損する。その尊1象の上方に九品往生図浮き彫りがつくられる。この浮き彫りについては,次章で論じる。立像の間に供養者像浮き彫りが配置される。図2小南海石窟中窟北壁-131-
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