鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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16)。形台座は宣字形である。台座の反花は線彫りによって表される。台座の背後に火炎形がある。(8) 「中品住生」短冊形は正方形に近い。題記には「中品住生」とあるが,『観無量寿経』中輩生観の「中品上生」をさすと考えられる(注15)。蓮華上に童子1艦を配置する。連茎が蓮池よりのびる。蓮華は完全に開いた形に表される。花弁は線彫りに表される。蓮肉上においてひれ伏す往生者は童子形に表される。(9) 「中品中生中品下生」題記は『観無量痔経』中輩生観の「中品中生」・「中品下生」をさすと考えられる(注蓮華2本が配置される。それぞれの蓮茎は蓮池よりのびる。蓮葉3枚が表される。連華は横からみた形で,線彫りによって表現される。それぞれの蓮華から往生者が1艦ずつ顔を出すようにみえるか,摩耗のため判然としない。(10) 「八功徳水」題記は,『観無量寿経』八功徳水想観(宝池観)にみえる「八功徳水想」からとられたと考えられる。短冊形の北側に蓮華1本が配置される。連茎が蓮池よりのびる。蓮華は完全に開く。往生者1艦が蓮肉上に合掌して坐す。往生者は線彫りに表される。短冊形の南側に蓮華1本が配置される。蓮茎が蓮池よりのびる。花は未開でカプセル状に表される。つぱみの中に往生者1謳か配される。これらには「下品中生」・「下品下生」と刻まれた題記がないが,いずれも連華化生の形に表現されることから,『観無量寿経』下輩生観の「下品中生」・[下品下生」を図像化したと考えられる。(11) 「下品住生」題記は『観無量痔経』下輩生観の「下品上生」をさすと考えられる(注17)。蓮茎が蓮池よりのびる。蓮華のつぼみはカプセル状に表される。そのなかに往生者1謳が配される。以上,九品往生図浮き彫りについて記述してきた。ここで,この浮き彫りの特質を述べておきたい。-136-

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