る。この認識に私自身も以下の二つの展覧会を企画したことで貢献したと信じている。一つは1991年ダルムシュタッドで開催された展覧会。もう一つは,1993年のヴェネッィア・ビエンナーレの間に開かれた。この二つの展覧会は西洋の批評家たちに大変な関心を引き起こした。やはり具体の活動の初期に,今日では普及した用語だが当時は知られていなかった,『行動のアート』,アクション,パフォーマンスと呼ばれる一連の活動全体に彼らは大きく広がった。具体の『行動のアート』は,大きく分けて3種類に区分できる。第一に,絵画制作に密接に結びついた一連のパフォーマンス。例えば,床の上に一枚の紙或いはキャンヴァスを広げ,そこに上から絵の具を撒き散らし,従って足で絵を『描く』ことを始めた白髪一雄のパフォーマンス。或いは,同じように床にキャンヴァスを広げるが,真ん中に石塊を置き,それに向かって絵の具の詰まった瓶を何本か投げる嶋本昭三のパフォーマンス。瓶は砕け,絵の具は粉々になったガラスの断片とともに,キャンヴァスの上に固定される。吉田稔郎は如露を使ってキャンヴァスに絵の具を注ぐ。鷲見康夫は計算器を使う。例はまだまだ挙げられるがやめておこう。これらのパフォーマンスは具体グループのアーチストたちによって観衆の前で直接行なわれていた。すぐに見てわかるように,これらは絵の創造という日的に適っており,これらの中にポロックのアクション・ペインティングとの密接な関係が見出されたのは間違っていない。ポロックは,周知のように,すでに1949-1950年から,絵画のために,床にキャンヴァスを敷き,その周囲を歩きながらキャンヴァスの上にしばしば缶から直接絵の具を垂らした。或いは,木製のへらを使い,絵筆は利用しなかった。具体のパフォーマンスの第二のタイプは,逆にポロックの例を決定的に越えているように思われる。なぜなら,絵画から離れて,『純粋なアクション』へと向かい,より徹底的に過激だからである。この第ニタイプのパフォーマンスは,上述の白髪一雄の『泥との格闘』や或いは村上三郎の『紙を破る』アクションに代表される。1955年10月に村上は紙で一連のスクリーンを作り,それらを突き破って走り抜けた。全部通過した後,アーチストは疲れきって地面に倒れこんだ。機関誌『具体』の4号に,『生まれ変わったように感じる』という彼の感動の声が記載されている。実際,このアクションは,おそらく無意識に,誕生のアレゴリーであるように思われる。このアクショ-144-
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