鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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1以の資料があればぜひ比較したい。時代が近い資料としては,政宗の息女むう姫の婚礼調度の一部と思われる資料群が伝存している。金梨地に雪輪薄紋を散らした豪華なものではあるが,すでにそこには桃山〜江戸初期の漆工資料特有の伸びやかさは見られない。また,政宗の次男・伊達忠宗の夫人の振姫(徳川秀忠の養女で池田輝政の娘・元和3年入輿)の婚礼調度に直接関与する資料は現在のところ不明である。ただ,後の利根姫の婚礼の際に,振姫の婚礼も考慮したようだが,時代が違うので同様の道具にするのは相応しくないと判断している。時期としては池田光政の娘.勝姫の婚礼調度として知られる綾杉地獅子文蒔絵婚礼調度よりさらに上がることになる。元禄時代に入ってからは,近江守忠貞の銘のある琴が二張,宇和島伊達家と仙台伊達家とに伝わっている。仙台の琴は元禄2年銘で四季花鳥図を蒔絵のみで表しているのに対し,宇和島の琴は元禄4年銘で珊瑚や象牙を嵌めこんだ貝尽くし文様に,丸彫りの龍虎を加えたさらに豪華な仕様である。側面の意匠は異なっているが,木画技法や龍額に眠用を張るなど,基本的な部分は同じ系統で,しかも伊達家の紋の一つである雪輪薄紋を各所に用いている点は全く同じである。宇和島伊達家の琴は伝承によると,仙台藩5代藩主・伊達吉村の夫人冬姫から,宇和島に嫁いだ娘の徳子(玉台院)に伝わったものという。漆工資料とはいえ楽器という特殊分野であるので,さらに類ヽ② 花樹に貝尽し蒔絵鏡台伝お種殿所用化粧道具の内仙台市博物館蔵r -151-

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