r ヽノ図1福岡・万行寺像の如来立像の基本と異なるものではない。その形式はおおむねつぎの2類にわかれる。作例一覧中にはこれを着衣形式A,着衣形式Bと表記した。着衣形式Aは,左肩をおおう柄衣が右肩で少し偏杉の上にかかってから正面にまわり,左肩にかかる最後の端を大きく折り返し,胸前には内衣(僧祇支)をのぞかせるものである〔図1,2, 3〕。右襟が下方の納衣にたくしまれるところでたるみをつくり,左襟では下層の衣が上層の縁にかかってたるむ。鎌倉時代中期以後にはもっとも一般的な形式である。21例中10例をかぞえる。ただし諸像の形式はこまかいところでは一致せず,同一の祖型にしたがった感あるいは相互に影響関係のある感は薄い。着衣形式Bは,柄衣が右肩にかかわらず右腋下をとおって正面にまわり,最後の端を折り返すこともしない形式である。襟の形は着衣形式Aと同様である。この形式は前記の形式よりも古い形で,鎌倉時代初期の仏師快慶の作,またそれに追随した作品,いわゆる安阿弥様の諸作品とおおむね等しい。襟の形は建暦2年(1212)以降の快慶の法眼期後半の作品と一致する。ここではこの形式をさらに3類にわけた。⑮専修寺像は衣文形式をふくめ,典型的な安阿弥様の像容をしめす。この像を着衣形式B-1とした〔図4〕。図2埼玉・鳥居観音像図3滋賀・芦浦観音寺像図4三重・専修寺像-167-
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