⑥ 出光美術館龍文盤「辛丑上用」銘形態が全く異なっている他,龍の背鰭や波濤の周囲などが輪郭線を持たないベタ塗りになっているなど,賦彩に租さが目立つ。これら2つの作品を同時期のものと捉えることはできない。従って④は成化年間晩期の1481年の作と考えられる。この龍文皿の類品としては出光美術館蔵アラビア文字皿「大明弘治年製」がある。これはアラビア文字で,見込みに神を讃える句,と高台内に「大明弘治年製」を赤一色(紅彩)で書いたものである。胎・形・高台作り・釉調など辛丑盤と殆んど異ならない。「大明弘治年製」銘の五彩(上絵付けのみ)皿には,この他に,日本に松竹梅文皿があり,またアルデビル廟に収められていた陶磁器の中に珠取り獅子文と花弁文とを描いた皿がある。官窯ではあるが,辛丑盤を含めて15世紀末年の作風の一端を示す一群として注目される。⑤逸翁美術館蔵龍文高足杯「趙府製用」銘高10.0cm外側面に雲龍波濤文を描いた高足杯である。なだらかな曲線を描いて端反りの口部へと器壁が立ち上がる碗に,裾の開いた直線的な脚がついている。胎は灰白色で薄手に作られ,少し灰色味を帯びた釉がかかっている。口縁や脚に微かな虫喰いや焼成時の割れがあるが,脚部の割れの上は傷を覆うように,上手に絵付けがされている。内側面は無文で見込み中央の三重円圏内に楷書で「趙府製用」と書かれている。火炎宝珠を追う龍は抑揚のあるのびやかな筆線で輪郭を描いてから,赤・黄・緑で賦彩されている。青はない。背鱗は④同様,筆を返しながら描いた楔形で,胴体の鱗も④同様の針書きの掻き落としで表している。⑦ 出光美術館龍文盤「辛丑上用」裏面-179-
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