ヽノ以下の⑦〜⑩はそうした発展期の作と考えられるものである。「古赤絵」と称されるものの中でも最も数多く見られるタイプで,インドネシアやフィリピンなど海外に数多く輸出された。日本でも山口の大内氏館跡から出土例がある。⑦富岡美術館蔵婦人図盤「陳文並造」銘口径31.0cm⑧五島美術館蔵人物図盤「陳文星造」銘口径30.7cm ⑦,⑧は唐草文を文様の主体にして龍鳳・獅子・人物を併せ描いた盤のうち,「陳文壺造」銘のあることで早くから注目されていた作品である。唐草文には②の内側面に見られた宝相華唐草が簡略になったもの,丸い団子を積み重ねたような花を持つ牡丹唐草文,菊唐草文,連唐草文などがあり,その組み合わせは様々である。人物盤の場合は菊唐草文を内側面に描くのが通例のようである。粗い粒子の混じった胎土に不透明な白釉が掛かり,畳付きのみ露胎で,その周囲には砂の付培がある。高台内には放射状の削り痕がそのまま残っている。そして白釉の上にやや崩れた書体で「陳文並造」銘が二重円圏内に書かれている。外側面に団子状の牡丹文,内側口縁部に波文,内側面に二重花弁の菊唐草文を描いているが五島美術館蔵人物文盤は菊文の外側花弁を濃淡二種の赤で塗り分け,人物図の一部に青を加えている。富岡美術館蔵婦人図盤は花弁を濃淡の赤に塗り分けた菊花と,濃い赤一色の菊花とを交互に配している。賦彩にはエ夫が見られるが,早い筆使いで大まかに文様を描いている他,器胎に歪みや割れが多く,それを上絵で調整している節があるなど,量産品であることが明らかである。ただ,菊唐草を配した人物図盤には更に簡略化と崩れの進んだ作があり,⑦,⑧はこの形式の中では比較的早い年代に位置するのであろう。⑩富岡美術館蔵婦人図盤「陳文盟造」銘ノ\⑪五島美術館蔵人物図盤「陳文並造」銘ヽr-181-
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