ヽヽノある。ライスも,単に『神殿のある風景』と紹介している(注10)。この作品は,大きさの点からもコルトーナの風景画としては最大のものの一つであるが,それだけでなく,古代風の牧歌的で雄大な雰囲気を湛えている。それがこの作品を,アンニーバレ・カラッチからドメニキーノを経てプッサンやクロードヘと連なる,17世紀ローマ風景画における,いわゆる「理想風景画(IdealLandscape)」の流れに近づけている。ッティ家別邸の内部装飾と関連している(この内部装飾については後に触れる)(注11)。このことから,両者は共に1620年代の後半に制作されたことが知られる。も多様化されている。F)では,背景は茫洋として広がる湖で,僅かに船の帆が見えるだけだが,G)では湖面に浮かぶ都市があり,円形の建造物や神殿が見えている。その左手には森に囲まれてキリスト教聖堂の塔も見えている。更に右手奥には壮大な山も描かれている。現在知られるコルトーナの風景画としては最大級であることや全体の構成の類似性からのみならず,理想風景画にふさわしい,高貴で牧歌的な雰囲気を湛えている点でもD)との類縁性を強く感じさせる作品である。図6聖ペテロと聖アンデレの招命のある風景図7聖ペテロと聖アンデレの招命のある風景(28.7X57.4cm) (ケンプリッジ,フィッツウイリアム美術館)既に述べたように,これらの風景画は何れも,コルトーナの最初のパトロン,マルチェッロ・サケッティのために,1620年代に描かれたと想像されている。ライスによれば,マルチェッロは自らも余暇には水彩の筆をとって風景画を描くこともあったと伝えられており(注12),コルトーナの風景画制作がこのパトロンの趣味と密接に結びF)〔図6〕およびG)〔図7〕は,既に述べたように,カステル・フザーノのサケG)は,F)と比較して画面自体が大きくなっているのみならず,背景のモチーフ/ -190-(lll.7Xl67.5cm) (チャッツワース,デヴォンシャー公コレクション)
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