茂実実序⑮ 1930年代における中国上海を中心とした印刷文化と,魯迅の版画運動が問う意味研究者:跡見学園女子大学教授町田市立国際版画美術館学芸員山梨県立美術館学芸貝神奈川県立近代美術館主任学芸員原田今回,『1930年代における中国上海を中心とした印刷文化と,魯迅の版画運動が問う意味』を解明するため,具体的に次の5つの課題を設定した。は何故か,りについて,何か。上に挙げた5つの課題の内(1),(3)については,上海魯迅紀念館,北京魯迅博物館,神奈川県立近代美術館及び個人所蔵家の所に調査を行い,写真撮影,調書を作成し,それなりの成果を上げることができた。取わけ上海魯迅紀念館では,凌月麟副館長,主任研究員楊志華氏の全面的協力を得て多くの成果を上げた。それが別添の上海魯迅紀念館・資料編のカードであります。カード化されたそれらの作品は,全て魯迅自身の手元にあったものであることから,その作品の価値は高く貴重なものであります。上海での調査が予定より大幅に時間がかかったがしかし,それだけの成果があったと考えられる。次に(2)の課題については,資料が非常に少なかったが,北京の慮溝橋記念館に延安魯迅芸術学院の版画専攻の学生が制作した,抗日年画が収蔵されていた。しかし,それは見学することはできたが,写真撮影及び調書等の調査は,記念館の同意が得られなかった。しかし,内容的には,民族性の強い作品であって,魯迅芸術学院の学生が西洋版画から必要にせまられて,民族性を持たぎるを得ない過程が理解できるもので(1) 魯迅が計画実行した木刻運動の意図は何か,(2) 延安の魯迅芸術学院の学生(版画専攻)が,民衆版画に急速に傾倒して行ったの(3) 中国の近代版画運動の広がりは何を意味したか,(4) 1930年代の上海におけるポスター,装禎等々に見られる西洋,日本美術との係わ(5) 1930年代という激動の時代にあって,版画を含めた印刷美術が果たした役割とは青木河野飯野正仁-284-
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