く木製器物〉和琴白河天皇陵の濠跡より出土した和琴の完形の槽部である。和琴は古墳時代の出土例は数多く知られ,また正倉院にも数例の遺品が残されているが,平安時代以後の出土例は従来知られておらず貴重である。材はヒノキの一枚板であった。木製五輪塔地輪,水輪,火輪,風・空輪からなる。地輪上面中央は水輪を固定するように彫りくぼめられている。水輪は中太の円柱ないし,円筒状である。火輪は下部中央を彫りくは‘め,水輪が外れないようにしてある。火輪の屋根には朱色の彩色が鮮やかに残るものがある。風・空輪は一体でつくられている。五輪塔の各部材の樹種にはヒノキ,スギ,カヤが用いられている。カヤ材は中太に成形加工する必要がある水輪にのみ利用されている。木製舟形木製舟形はこれまでに3点出土しているが,長さが15cm程度で,内部を彫りくぼめ,紬や右舷に木釘がのこり,帆をたてた様子が見られる。みなヒノキが用いられている。木製独楽白河天皇陵濠からは内面に赤と黒の彩色を施す独楽が出土している。樹種はヒイラギであった。く建築部材〉烏羽離宮跡東殿の池遺構からは建築部材が出土しており,烏羽離宮の建造物の在りし日を現在に伝える貴重な資料である。建築部材の内容は屋根板,野路板,垂木,角柱,床板,根太である。それらの樹種は以下のようであった。屋根板9点出土し,うち6点にヤリガンナによる表面の調整痕が認められる。樹種の内訳はヒノキが6点,スギが3点であった。野路板3点出土し,割材で表面に加工はみられない。すべてスギである。垂木5点出土し,ヒノキ4点,コウヤマキ1点である。角柱1点出土し,柱に頭貫,繋ぎ梁を組んだ痕跡が残ることから柱の上部である。幅広い面取りがされている。ヒノキである。床板幅の広い床板を割って屋根板に転用したもので4点出土している。床板にするためャリガンナで丁寧に調整した痕跡がのこる。3点がヒノキ,1点がスギである。*艮太異なる間隔で床板を固定した釘痕が残る。表面にャリガンナによる調整がわずヵ斗こ残る。スギである。-309-
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