鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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ノヽヽノヽr \ f 1 全体写真く福岡市博多遺跡出土金白鐵蒔絵手箱〉博多遺跡では平安時代後期(12世紀)の蒔絵鏡箱が出土している。箱は懸子を持ち,鏡および化粧道具が納められていたが,木胎は腐朽が進んでいた。蒔絵の文様は茎花文で,茎と葉が金粉により,花は白鐵粉で表現されている。前者からは蛍光X線分析で金を検出している。また後者からは蛍光X線分析で錫と鉛と検出し,白鐵が錫鉛合金によるものであることを確認した。金の粒子は鳥羽離宮跡出土の蒔絵粉よりも細かく,密に蒔かれているのが特徴である。研ぎの痕跡が一部に認められる〔図4-7〕。花の部分は腐食が激しく,粒子の形状を確認することができない。断面観察によると白鎌は腐食してすでに金属ではなく鐵のように軟化している〔図4-8〕。塗膜の厚さは0.08mmで,高陽院出土の蒔絵硯や鳥羽離宮跡出土の蒔絵資料と比較するとそれよりも薄い。塗膜断面で観察される腐食した白鐵粉の大きさは0.13mm,金粉は細長いものがあり長径0.07mm,短径0.03mmを計る。図3高陽院出土金銀蒔絵硯2 拡大写真-312-

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