鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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v.おわりに以上平安後期の銅製品,木製品,蒔絵試料についての材質調査の結果を述べた。これらの遺品はすべて出土品であるが,製作当時はー級の美術工芸品であったと考えられるものもある。最初,同材質あるいは同技法と考えられる伝世の美術工芸品との比較も予定していたが,実際には力量不足もあって,今回は調査事例の報告に重点をおかぎるを得なかった。それでも銅製品については奈良時代との類似点・相違点がおほ‘ろげながらも明らかになってきた。また木製品については美術史と関わりのある遺品について,用材を明らかにすることができた。木材については伝世品についても表面観察である程度の材の推定は可能と思われるので,今後両者の比較を行っていきたい。蒔絵の研究は近年顕微鏡にて表面観察を行い,粉の大きさ,形状,密度などを記述することが一般的になってきたが,さらに塗膜断面からの観察を加えることにより,蒔絵技法を明らかにする上でのより精密な調査を行うことが可能となり,基準資料を提供できたと考えている。末筆になりましたが成瀬不二雄先生と本研究の助成をしていただいた財団法人鹿島美術財団には記して感謝致します。-314-

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