鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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ロッパ流の絵画教育の手厳しい洗礼を受けておらず,また油彩画に対して日本人ならではの,自由な制作態度をもって向かうことができたことに起因している。彼は日本に対する郷愁や追憶を一つ一つ物語化し,具体的なモチーフとして画面一杯にちりばめた。彼の作品に登場する牛や馬,土筆などの植物,風神や雷神などがその良い例である。〔fig.3, fig. 4〕画家自身の体験が作品の中で語られていくこういった一連の手法は,彼の生涯を通じて変わることはなかった。まずこの手法の分析が,彼の晩年の作品を説き明かすための鍵の一つになってこよう。しかし彼の特殊性はともかくとして,彼の同時代の画家たちが共通の問題として抱えていたこともまた見逃せない。fig. 2 国吉康雄くオガンキットの入江>1920 92.0X56.0cm 油彩・カンヴァス神奈川県立近代美術館fig. 3 国吉康雄<牛といるリトル・ジョー>1923 71.1X106.7 cm 油彩・カンヴァス個人fig. 4 国吉康雄<悪夢>1924 39.4X51.4cm ペン・インク・紙オガンキット美術館,メイン\ノ-384-/‘

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