鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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a発句と初折表の下絵が関連(• ⑪■10月の張行〜全下絵が楓葉の散らし(⑧)または秋草(⑪)。賦白何連歌賦何木連歌賦玉何連歌賦何船連歌賦何船連歌-429-天理図書館天理図書館歓喜光寺個人個人⑪天正11(1583)正.9⑫天正15(1587) 6.24 ⑬天正16(1588)正.19⑭天正20(1592) 11. 24 ⑮慶長元(1596)12.25 以下の考察はこの連歌番号に基いて行なう。II 連歌と下絵の対応の諸相まず下絵と連歌の関係について①〜⑮を分析してみると,次の5つのタイプがあることがわかる。1500年までの年記をもつ3例に認められる。発句に用いられた語句が下絵の主要なモティーフと対応している。①「神代」〜日輪・鳥居・依代の一つ松③「老松」〜柵に囲まれた影向松⑥「竹の若葉」〜竹林⑦「梅」〜梅樹b連歌の興行地や季節と下絵が関連15■16世紀中頃の4例に認められる。初折表のみならず名残の折まで全紙にわたって季節の統一した下絵が用いられる。②〜将軍足利義教の9月の富士下向途次の張行〜富士山が二図挿入され,殆どが薄.稲穂・秋草など秋のモティーフ。③■ 3月の北野天満宮における張行〜影向松・梅という北野社の象徴が初折表に表わされ,以下の下絵は春のモチィーフ。C連歌の主題と下絵が対応する⑩に顕著。「南無阿弥陀仏……」以下浄土要文を詠み込んだテキストに対して,下絵は蓮池図を金銀泥で描く。d連歌と下絵が関連しない⑤⑨⑫⑬⑳の5種に見られる。これらの下絵はすべてが四季の花鳥,草花を並列的・近接拡大的に描いているところに特色がある。

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