鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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宝鎌倉時代藤田美術館),『伊勢物語絵巻』(重文鎌倉時代和泉市久保惣記念美術館),『伊勢新名所絵歌合』(重文鎌倉時代神宮徴古館),『松崎天神縁起』(重文鎌倉時代防府天満宮)など中世の絵巻物に描かれる貴族や位の高い僧侶などの邸宅の家具調度として散見される。画中画の特殊性は考慮せねばならないが,現在伝来している手箱により豪華な作例が多いことは,こうした手箱が高位の人々に供された特殊な作であったことを窺う一端となっている。4.手箱の意匠手箱の表の意匠構成は,大きく「秋野鹿蒔絵手箱」(1 国宝鎌倉時代出雲大社)のように,主として景物を描く,いわゆる叙景文と,「蝶牡丹蒔絵手箱」(5 国宝鎌倉時代畠山記念館)のように,同一のモティーフを繰り返し用いて構成する,散らし文の二つに分けられる。前者は「住之江蒔絵手箱」(2 重文鎌倉時代安貞二年1228輪王寺),「梅蒔絵手箱」(6 国宝鎌倉時代三島大社),「長生殿蒔絵手箱」(11 重文鎌倉時代徳川美術館),「山水蒔絵手箱」(12重文鎌倉時代MOA美術館),「蓬莱蒔絵手箱」(13 鎌倉時代京都国立博物館),「秋野蒔絵手箱」(16 重文鎌倉〜室町時代遠山記念館),「秋野蒔絵手箱」(17重文南北朝時代春日大社),「山水蒔絵手箱」(18 重文南北朝時代藤田美術館),「源氏夕顔蒔絵手箱」(19 重文南北朝時代萬野美術館),「桐竹蒔絵手箱」(39 室町時代個人蔵),「梅月蒔絵手箱」(41 室町時代東京国立博物館),「松梅蒔絵手箱」(44重文室町時代枚聞神社)であり,後者は「片輪車蒔絵手箱」(3 国宝鎌倉時代東京国立博物館),「浮線綾蒔絵手箱」(4 国宝鎌倉時代東京国立博物館),「菊枝蒔絵手箱」(8 重文鎌倉時代畠山記念館),「千鳥蒔絵手箱」(9 鎌倉時代東京国立博物館),「亀甲蒔絵手箱」(14重文鎌倉〜室町時代春日大社),「菊枝鳥蒔絵手箱」(33 南北朝時代大山祇神社),(菊蒔絵手箱」(34重文室町時代熱田神宮),「亀甲蒔絵手箱」(36室町時代個人蔵),「梅花蒔絵手箱」(38 室町時代個人蔵),「笹松蒔絵手箱」(40 室町時代五島美術館),「千鳥蒔絵面箱」(43 重文野村美術館)である。また10(重文鎌倉時代大倉集古館),35(重文室町時代東京国立博物館),37(重文室町時代前田育徳会),42(室町時代個人蔵)の扇面散蒔絵手-436-

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