鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
451/475

11-12世紀の制作と推定されている壁画の主題は,「聖母子と大天使」「玉座のキ漆喰は比較的厚塗りですが,アッリッチョとイントーナコの区別は発見できませんでした。円光の同心円はコンパスを用いて正確に線刻されています(ストゥッコによる盛り上がりはなく,円光内は金箔の代わりに黄色で彩色されています)。その他,カルトーネを利用したらしいあともあり,グラッフィート,墨縄や線引きあとが確認できます(漆喰のやわらかいうちに墨縄を用いています)。壁画に凹凸が激しく,ジョルナータの継目は確認できませんでしたが,彩色されたストラートの状況からもブオン・フレスコ画法を用いた可能性は充分にあります。天井はウルトラ・マリーンの青(星は白色)で塗られており,その下には赤地が見られることから,顔料はラピスラズリーの可能性もあります。所在地:CarpignanoSalentino オーカ一色(約5mm)の厚い壁の下から発見した壁画ですが,その下にさらに3層の壁画が見えます。「聖母子」「聖ビアジョ」をはじめとする多くの聖人像が描かれていますが,「聖エウスタキウス」の画面中にく959年>の年記の読み取れるギリシャ語が書かれており,正確な年代のわかる中世壁画として,貴重な資料と言えます。ただ,やはり画面は全体に半透明の膜がかかったように曇っており,表面を濡らさないと鮮明な画像は見えません。ここはカルピニャーノ・サレンティーノの町の中にあって,バロック様式の小さな祭壇のある地下礼拝堂になっているため,管理人もいますが,修復は受けていません。所在地.•Poggiardo(博物館に保管)町の中心にある広場に小さな円筒型の博物館ができていて,クリプタの壁画はすべてここに移されていました。博物館は町役場(Comune)の管理下となっていますが,管理費の不足のために放置されています。周囲には水路が巡らされていて,館内の湿度をクリプタがかつてあったと同じ状況に保つように配慮した設計ですが,現在は水も流れていません。リストとマグダラのマリア」「大天使ミカエル」「聖コズマと聖ダミアーノ」ほか多くの聖人像が描かれています。(5) SS. Marina e Cristina (6) Cri~eli --442-

元のページ  ../index.html#451

このブックを見る