(1) 「タッチは行為であって,痕跡としてその作家のしるしが示される。つまりこのし(2) 「タッチはそれ自体目に見える形式でいえば絵の具の跡である。つまりある一群の(3) 「タッチはしるしをつけるという行為とともに作家が経験し,観る者が想像する触可能性について考察する契機としたい。インデックスとしての形式(forms)について美術批評の方法論についていうと,記号論が組み込まれていく1970• 80年代の新しい思潮のなかで,フライに始まるフォーマリズムは,しばしば形式(forms)を媒介としながら美術作品を還元主義と歴史主義の閉塞状態に押し込めるものであるという批判の対象となってきた。そのような批判のなかからロザリンド・クラウスが1977年に『インデックスについてのノート』を発表し,歴史主義に陥ったフォーマリズムに対抗するものとしてインデックスやシフターという概念を美術批評のうえに登場させたのである。クラウスはこのなかで「(ラカンがいうところの,言語が構築するある種の記号である)表象(symbol)とは異なり,インデックスはある複数の対象の物質的な関係(physical relationship,ただしこの訳語に関しては今後再考の必要があると考える)を軸として意味をなす」(注2)と書き,デュシャン,ヴィデオ・アート,パフォーマンス・アートに共通するインデックスを示しているのである。シフによるセザンヌ研究の方向性についてシフはこのインデックスの概念を『セザンヌの物質性(physicality)』のなかで展開している(注3)。同書のなかでシフはセザンヌの作品がもつオリジナリティの根拠を作品のうえのタッチにもっていき,そこから「ヴィジョンとタッチ,すなわち目と手の間を行き交う形而上的な領域」に踏み込んでいく。ここでシフが明らかにしているものは,作品とその制作過程に関する3つの側面である(注4)。るしは行為をインデックス化した記号なのである。」タッチは似た形のものに図像的に(iconically)結びつくのである。たとえばそれはりんごであると同時に描かれたりんごなのである。」覚である。」さらに(1)に関してシフは「しるしをつける者=作家のインデックスとしてのしるし-450-
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