鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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右脇士は,高く髪を結いあげて垂髯とし,細緻な毛筋彫を施し,正面中央で賢髪が左右に分かれて天冠台に巻きつく。天冠台は,紐2条の上に列弁帯を廻らす。白奄を嵌入し,目に玉眼を嵌入して半眼とし,閉口する。耳染は環状として中心を抜き,耳染の上を皆髪1条が廻る。三道を彫出する。天衣は,両肩から背面に大きく立ち上がって廻り,下端は両胸横を下がって肘後ろで円を描いたのち,肘にかかって外側へ垂下する。条吊を廻らし,裳・腰布を折り返して着け,腰紐を正面で縛る。裳は,正面で左からの布を外にして打ち合わせ,背面の折り返し部と裳先を,後方になびかせる。両腕を屈臀し,胸前で合掌する。上体を前にかがめ,膝をほとんど折らずに右足を前に進め,足裏の角ほぞを台座蓮肉上のほぞ穴に差し込んで立つ。左脇士像も,概ね右脇士像に準ずるため,ここでは相違する点のみを記する。地髪正面には観音標識である阿弥陀如来立像を付し,髪際正面から左右に分かれる賢髪は2条に表される。両肩から後方に遊離して立ち上がる天衣を,現状では欠失している。両腕を屈腎し,腹前において両手で蓮台を捧げる。体勢も基本的に右脇士像と同じであるが,左足を前に進める。両脇士像とも,錆漆地に漆箔して仕上げている。次にレントゲン撮影による新知見も加えてその構造に移るが,まず中尊像については,頭体幹部は木心を中央の後方にはずしたヒノキ1材より造り,耳後ろで前後に割り放ち,正面は胸部の上方,背面は襟下へと斜めの矧面で上下に割り放つようである。像内は大きく内剖りされ,像底を3cmほど剖上げ,釘留めされた木片で玉眼を抑え,再び矧ぎ合わせている。両肩以下を別材から造り,はぞや釘で留め,右前膊内側の袖,右手首以下,左前膊内側の袖,左袖口,左手首以下などを別材製とする。また左前膊外側の袖も,別材製となる可能性がある。両足首以下,足ほぞまでを別材から造り,両足先を矧いでいる。右脇士像は,ヒノキ材製で,頭部は前後に3材を矧ぎ,内剖りして玉眼を嵌入し,体部に差し込む。髯は別材製とする。体幹部は,1材から造り,正中で左右に割って内剖りして再び矧ぎ合わせる。両肩や両足先,天衣遊離部などを適宜に矧いでいる。左脇士については,レントゲン撮影を行っておらず,表面の漆箔等によりその構造は不明である。保存は総じて良好であるが,中尊では,肉誓珠・白竜・白奄真上の螺髪・左袖ロ・両手首以下・両足先と,表面の漆箔および台座・光背を後補する。両脇士については,-39 -

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