鹿島美術研究 年報第11号別冊(1994)
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1世紀。vm.支柱付き壁面タイプ:幅木・オルトスタテス部[主腰部:筆者]・覆帯[フリーズ層]•主腰部[上部:筆者]・冠帯の5分割で,彩色や刻線あるいは浮彫り状漆喰によって施される。さらに支柱建築法が出現する一床から装飾全体の枠取り,帯状層上,冠帯上に追加。圧倒的に住宅だが墓にも用いられる。前4-2/1世紀。組積造り様式とポンペイ第一様式との相違点のひとつとしてデロスの作例を中心とする形象フリーズを有する多数フリーズ層があげられていたが,Laidlawの指摘の通り,それがデロス組積造り様式における特徴であるとはいえポンペイ第一様式にも形象フリーズは存在しており,コーサの例では主腰部上に形象フリーズとパネル列とが上下に並ぶ2段の帯状層がある。またポンペイでは1段の主腰部上帯状層に剖形が付<例は一般的だが,それだけではなく大変稀であるがその層の上にさらに歯列状装飾を伴ったコーニスを有する例がある(6.9. 3/5, Casa del Centauro, cubiculum 3, 前室)。この層を強調させるまたひとつの手段である。この主腰部上帯状層の上にさらにコーニスを設けその上に上部を配する手法は初期第二様式で一般的に見られる。その場合コーニスはさらに張り出して格間天井が設けられている。歯列状装飾を伴ったコーニスは現存する第二様式最初期の住宅(Casadei Grifi, II,ローマ)にすでに現われる。組積造り様式にこのような手法があったかどうかは寡聞にして知らないが,例えばペラ「彩色壁面装飾の家」エクセドラ壁面装飾は2段のフリーズ層を有しており上段はキュマ・レウェルサを冠する。また,タイプVIに主要層が分割されず幅木が欠如するタイプがある(デロス)。Andreouの記述に挙げている2例はどちらも最下部が現存していないとカタログにあり,根拠が不明である。が,もしこのヴァリエーションが存在していたのであるとすれば,ポンペイにも同様の壁面分割例がある(Casadel Centauro, cubiculum 3,アルコーヴ)。ポンペイ第一様式用語では腰羽目・帯状層・上部となる。この組積造り様式主腰部とポンペイ第一様式腰羽目との差異は古代においても実際に根本的に異なって捉えられていたのか,それとも現代の研究者たちによって引き起こされた混乱なのかは,ギリシア・ローマにおける第一様式全体を捉えていくにあたり今後の研究にとって考えなければならない問題点である。最後にタイプvmであるが,柱による床から装飾全体の枠取りは,ペリステュリウムにおけるポンペイ第一様式装飾はすべて片蓋柱を有するためこの部類に属する。バシ-50 -

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