2分割された幅木の例が参考になるであろう。Parete Nera)。ポディウムは絵画表現によるがそれには実際の(立体表現による)剖部が配される。前述のCasadel centauro, Cubiculum 3,アルコーヴのみはAndreouの組積造り様式タイプVI同様帯状層の上に切石積みの上部が配される。腰羽目・主腰部タイプは4例で,コーサ1点とポンペイ3点である。ポンペイの例はすべてCasadi Sallustioにあり(atrio 10, ala 17, tablinum 19)興味深い(注6)。いずれも腰羽目は壁面構成上低い位置に配される。腰羽目・上部タイプは3点であるが,腰羽目は丈高に設けられる。装飾のパターンは標準的な第一様式装飾のそれに対しかなり簡略化されている。少数例も重要であるが,今回は一般的な傾向把握を目的とするためこのタイプの考察はここでは割愛する。②の腰羽目・主腰部タイプは,腰羽目が一般的な組積造りの幅木よりも丈商である点を除けば,どちらも最下層それも主腰部直下に位置するという点で同じである。また幅木も拡張される場合があり,コーサの例の腰羽目よりも高い例も存在することは興味深い。このことからこのタイプの腰羽目も丈高の幅木と捉えることは可能であると思われる。つまりギリシア組積造り様式装飾壁面分割法をそのまま導入したタイプである。導入した時点で見本となった装飾の幅木(腰羽目)が既に丈高であったのか,それともイタリア到来後に高くなったのかは不明である。また蹴板の有無は実用問題によって変化したであろうが,装飾要素として捉える場合には,組積造り様式の上下①の腰羽目・帯状層タイプは,腰羽目と主腰部との間に帯状層が挿入されるという点で組積造り様式の壁面分割法とは単純に同じではなくなる。しかし,もし腰羽目を撤去すればその直上にある帯状層は最下層となり,幅木に変身する。今再び腰羽目を挿入すれば,今度は帯状層であった幅木はもはや帯状層に戻ることはなく,嵩上げされた組積造り様式装飾壁面の幅木のままとどまることになる。嵩上げに用いられた腰羽目とはすなわちポディウム(基壇)である。この解釈が第一様式のどの段階から存在していたかは不明であるが,少なくとも第二様式への移行期あるいは第二様式初期には腰羽目をポディウムとして捉える意識があったことが確認できる。第一様式末期もしくは第二様式時代と考えられる作例としてペリステュリウム壁面腰羽目に表わされたポディウムがある(7.4. 59, Casa della 形が設けられていたという。また現存する最初期の第二様式壁面装飾であり第一様式壁面装飾を絵画表現で模倣したローマの作例にも既に腰羽目はポディウムとして表現-52 -
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